亜熱帯の島

亜熱帯の島

<トムソーヤクラブ通信 Vol.45、1997/06/15、ふれあいランドより転載>写真は2010年3月沖縄本島読谷村にて

いりおもて島の海と川をカヌー(シーカヤック)でめぐった。サンゴが水面下に透けて見える浅瀬を進む。水中に青い影がチラチラと揺れているのが気になって「ブルーシートの切れ端がすててあるのかなぁ」などと思いつつ浜にこぎ寄せる。

その後、シュノーケルと水中メガネを使って潜ってみて驚いた。青い影は500円玉ほどの大きさの魚が泳ぐ姿だった。さまざまな種類のサンゴにびっしりとうめつくされた水深2メートルほどの水中は、ルリスズメダイを初めとした多種の魚、シャコガイなど多様な命の美しさに満ちていた。“水族館なんか めじゃないぞ”と声を大にした。

マングローブ林を歩く。マングローブと総称されるうちの一種、オヒルギの鉛筆状の種子は潮の引いた泥砂地に直立して発芽している。なぜ直立できるのか?

観光バスのガイド嬢の案内によれば、種子はまっすぐに落下して地面につき刺さるという。カヌーで島を案内してくれたガイド氏は、カニが種子の端を持って巣穴に持ち込もうとするために、途中でつかえて直立するという。なんだかリスの蓄えたドングリが忘れられて春に発芽する話を連想させて興味深い。言われてみればカニの巣穴もいたるところにある。次に訪れるときは事実を確認することを誓って、いりおもて島を後にした。

東京からは南西に2,100km離れたいりおもて島は、亜熱帯性海洋気候に属し、島の9割が原生林におおわれている。この原生林にはイリオモテヤマネコをはじめとした珍しい動物や植物が数多く生息している。さらに海には前述のサンゴと魚!

私たちの暮らす国の、多様な環境を知るためには絶好の場所だなあとしみじみ思ったのだが、多くの人にたっぷり時間をとってこの島を訪ねてほしいと思う。私自身も次の機会を作り出すべく、ままならない時間と××をやりくりしているところである。

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